お疲れ様です。
今日は、少し差し込むようなテーマについて書こうと思います。
役者が売れない理由は、「社会人」との感覚のズレがあるから。
そのズレについて筋道立てて、説明していきます。「自分には無関係だ」と思う方にこそ、読んでほしい。
他者との関係構築において、非常に重要な観点です。
強めの言葉に気を悪くした方へ、最初にお詫びしておきます。ただ、僕自身には「書く権利」があると思ってます。
僕の知り合いにもいるんです。売れない役者が。A君と呼ぶことにしましょう。
ずっと彼の夢を応援してきた。時間とお金と気持ちを投資してきた。だからこそ、残念に思ってもいます。
僕たち応援する側の気持ちを安く見ている。そこに気づいてしまった。
「安く見ている」態度に売れない理由が詰まっているのです。
<全体の結論>
役者が売れない理由は…
・友人への期待とのズレ
・社会人の「お金の価値」「時間の価値」
・顧客視点の欠如
売れるとは、一般人に支持されること。
友人との期待とのズレ
<結論>
彼らは、僕たちが喜んで舞台に足を運ぶと思ってる。
僕らお客にとって「負担になっているかも」という客観的視点なんて一切ない。
「今度、舞台やるから見に来てよ」
そう、友人から声をかけられたら、あなたはどうしますか?
あなたが優しい人なら、その舞台に足を運んであげるでしょう。僕もそうしてました。A君が出る舞台を可能な限り見に行った。友達だから。
でね、一度誘いに乗ったら最後、何度でも告知してくる。面白くないとは言いづらい。チケット代が高いとは言いづらい。複数日程あるから、用事があるとも言いづらい。遠いから面倒だとも言いづらい。
そんな言いづらさ、にかこつけて何度でも勧誘してきます。
なぜか、彼らは恐ろしいくらいに鈍感なのです。僕らがやんわり断っても、めげずに誘ってくる。
舞台に誘う側は、友人たちが当たり前に来てくれると期待しているかもしれない。一方で、実際には負担を感じていることに気づかない。
「気付けない」のでしょう。自分の表現に自信があって、客観的な視点はなく突き進んでいる。大変結構なことだが、ギャップこそが「売れない理由」だと言える。
社会人の「お金の価値」「時間の価値」
<結論>
交通費400円、舞台のチケット代5000円。土日の3時間。
これを負担してること。彼らは、そのありがたみを本当の意味で理解してない。
僕たち、一般人は大学を卒業して大抵が会社に就職する。「社会人」になる。
「夢を捨てて、画一的にスーツを着て、毎日満員電車に揺られてる」と揶揄される社会人になる。
一方で、役者友達はバイトをしながら舞台に出続ける。ここから、両者の価値観はぐんぐん開いていく。
それでも、僕はA君の舞台に足を運んだ。
「社会人」にとって、舞台を見にいくことがどういうことか。きっとA君は理解してない。
「土日もあるから、見に来てよ」
その土日が社会人にとって、どういうものか。1週間働いた後にくる、2日間しかない休息の時間だ。その時間で、ディズニーランドで遊べるし、箱根に温泉旅行にも行ける。
6000円というチケット代は、映画が3本も見られるし、ちょっとしたコースが食べられる値段でもある。
ネットフリックス、ディズニーランド、温泉旅行…金額的にも時間的にも無数の競合があるということを理解しているんだろうか。「面白いから見に来てよ」の面白いは、それだけの覚悟をしてから言ってほしい。
愛娘の発表会ならまだしも、大学時代の同級生の発表会に数千円+交通費+休日を割くだけの理由を教えてほしい。
何度も足を運んだ僕へ、「この前はありがとう。軽くご飯でもお礼させて」とA君から言ってきたことは一度もない。いつも、自分の家の近くへ呼びつける。もはや彼個人に問題があるのかもしれないけれど。
顧客観点の欠如
<結論>
舞台に来てもらう=顧客に自分の商品を買ってもらうこと。
そのくらいの気持ちで、しっかり言語化された宣伝を今まで聞いたことがない。
「社会人」は毎日顧客のことを考えている。
とまでは言わないけれど、
舞台だって同じ。自分たちの表現した作品に、お金を出してもらう必要がある。
顧客を呼ぶためには、どの作品がどうすごいのか?どんな気持ちで作り上げたのか?何を伝えたいのか?鑑賞後どんなメリットがあるのか?言語化して広告する義務がある。
もちろん顧客側から自発的に行動を起こす場合は別だ。宣伝されなくても劇団四季のライオンキングは見にいく。明らかに見にいくメリットがあるからね。
「表現だ。芸術だ。メリットで語るのは野暮だ」
という反論に対しては、「では、仲間内だけでやっていてください。僕たち社会人の限られた時間とお金を狙わないでください」
そう、A君にいいたい。
きみの一番近くで応援していたファンだからこそ、本当は伝えたい。売れてほしいから。
まとめ
ここまで役者が売れない理由について説明してきた。
・友人への期待とのズレ
・社会人の「お金の価値」「時間の価値」
・顧客視点の欠如
この3つの観点の重要性は、役者だけに限った話ではない。
なぜか?
売れるというのは、僕たち凡庸な一般人に支持されることだから。
この観点を忘れずに持っておくことは、普通の人たちを味方につける上で重要だと言える。普通の人は、普通の収入と普通の時間で毎日の生活を維持するために、世界を結構シビアに見ている。
価値のあるもの、価値があると伝えられているものは、選ばれる。その逆もまた然り。
「今回の舞台おもしろくなりそうなので、よければぜひきてください」
こんな誘い文句でチケットが売れるなら、広告代理店もコピーライターもCMもいらない。甘いんだよね。