本を読んでいる時に気づいたこと。
1ページ目から、順番にページをめくって読めない。パラパラと全体を流し見して、気になったページで手を止める。面白いと感じた1節だけを拾い読みして、またパラパラとめくる。目次を読んで、気になったページへ飛んで、また拾い読み。ビュッフェみたいに、自分の好きなものだけを皿に乗せて席に戻るような感覚に近い。
「しっかり読んでも記憶に残るのは一部だけだから、ざっくり読みや一部読みでいい」
と言う話を聞いてから、頭から読むのをやめていたような気もする。
気づいたら小説が読めなくなっていた。1ページ目から順番に、1行ずつ文字を追っていくことが苦痛になってしまった。本を開くまでのハードルが高く、それを乗り越えたとしても読む習慣が続かない。小説だけが、買った側から未読のまま積まれていく。発売してすぐに購入した、村上春樹の『一人称単数』はいまだに読めていない。
読んだ側から知識が吸収できて、明日から使える。読書の目的がそこにシフトしていった。
情報が欲しい→検索する→情報を得る。
これの繰り返しを続けてきたせいなのか、実用性の低さ・時間効率の悪さに耐えきれない。すぐに報酬が欲しくなってしまう。この流れで、簡単に情報の速さやショート動画の流行が招いた弊害だと述べても面白くない。右に傾けば「左へ行け」と言い、左に傾けば「右へ行け」というネットメディアのマッチポンプ感を模倣したくはないしね。
ただ事実として、小説を読む筋力は確実に衰えている。この理由を説明する上で、以前から感じていた違和感の話をしたい。
結論から言うと、本を読む行為を“読書”とひとまとめにしているが、使う筋肉が全く違うからではないかと思うのだ。
新しく入ったサークルや会社で自己紹介を求められた時に「自分の趣味はなんだろう?」と考えあぐねて「読書が好きです」と言う。ただ読む本のジャンルの違いによって人のタイプって全然違う。
大概は読書と聞くと、なぜか小説を思い浮かべる。なので、読書が趣味と聞くと文学趣味なイメージを持って「夏目、芥川、太宰ですか?」みたいなラベリングをしてしまう。ストーリーに入り込み、行間を読み、表現力に唸る。効率性よりも、人生の豊かさについて考える。長距離型の読書。僕は文学も好きな人間なので、決して貶めているわけではないと言っておきたい。
ただ、専らビジネス書を読む人たちは、対局にいると言っていい。本を読む理由は、目の前の問題を解決するため、明日の仕事に生かすため。できるだけ若く出世して、金を稼いでという志向が強い。短距離読書型だ。こんな人たちがビジネス書を読むと言うよりも、短距離型の需要が大きいから本ができたのでは?とすら思う。
最近は『教養としての〇〇』『超一流の〇〇力』というタイトルコピーを見ると辟易してしまう。「短距離読書型の人に買わせよう」という魂胆がダダ漏れすぎてるからね。結局僕も短距離型寄りの人間だから、内容が面白ければ買ってしまうんだけれど。
ともかく、「読書」だけではその人の本質はわからない。
今の話だけだと、「短距離読書型」をディスっているだけなので、別の話もしよう。
「お金持ちの人ほど本を読んでいる」という有名な研究結果がありますね。
出版文化産業振興財団の調査では、「世帯年収が高いほど読書量は多い傾向」という結果を明らかにしています。
1カ月に最低3冊以上本を読むのは、世帯年収が「1500万以上」の人が最も多く 40.5%である一方、最も少ないのは「300~500万未満」の人で22.6%。
https://10mtv.jp/pc/column/article.php?column_article_id=1507
ここでは読書量としか言及していません。ただ、読書タイプとしては「短距離型」だと言える。なぜかといえば、インプットした情報をすぐに活かして成長していくタイプだから。ピカピカのスーツを着て、PDCAとかKEPTとか言ってる人たちです。
彼ら「短距離読書型」の方が、「長距離読書型」よりも年収は高い傾向になるのでは、という仮説です。
学部別平均年収ランキングにて、経済学部系(実学)>文学部系(非実学)なのも、読書タイプの違いによる年収の差仮説の裏付けになるのではないでしょうか。実学系の方が、資本主義社会によりフィットしやすいからね。
なぜダラダラと「長距離読書型」と「短距離読書型」の良い面・悪い面について書いたかと言えば、中庸が大事だと思うから。僕は、「短距離読書型」に寄っているから少し長距離に寄せてみたい。
どちらもやってみればいい。
「コーヒーが健康を増進する」と聞けば、毎日1リットル飲んでしまったり、「コーヒーは健康に悪い」と聞けば、翌日から1滴たりとも飲まない…と極端に振り切らない。
毎日決まった量までのコーヒーを飲むように、物語も楽しみたい。
そんな気持ちが芽生えて、少しエッセイ風の文章にも挑戦してみました。読者さんにとって速く情報が得られる記事だけでなく、合間にゆったり眺めるコーヒーブレイク的な記事もいかがでしょうか。